- 潰瘍性大腸炎とは
- 潰瘍性大腸炎の特徴
- 潰瘍性大腸炎と似ている疾患
- 潰瘍性大腸炎の原因
- 潰瘍性大腸炎の症状
- 潰瘍性大腸炎の検査・診断
- 潰瘍性大腸炎の治療
- 潰瘍性大腸炎と妊娠
- クローン病について
- クローン病と似ている疾患
- クローン病の原因
- クローン病の症状
- クローン病の検査・診断
- クローン病の治療
- クローン病と妊娠
潰瘍性大腸炎とは
炎症性腸疾患(IBD)は、小腸と大腸の粘膜に原因不明の炎症や潰瘍を引き起こす疾患であり、代表的な病名にはクローン病と潰瘍性大腸炎が含まれます。主な症状としては、大腸の粘膜にびらんや潰瘍が形成されることによる血便や、下痢と腹痛が頻発する場合があります。病変は直腸から結腸に上行性に広がり、その拡がり方や経過に応じていくつかの分類が存在します。
病変の拡がりによる分類
- 全大腸炎型
- 左側大腸炎型
- 直腸炎型
病期の分類
- 活動期
- 寛解期
重症度による分類
- 軽症
- 中等症
- 重症
- 激症
臨床経過による分類
- 再燃寛解型
- 慢性持続型
- 急性激症型
- 初回発作型
潰瘍性大腸炎の特徴
男女比は1:1で、性別による発症差はありません。発症のピークは男性が20~24歳、女性が25~29歳とされていますが、広い年齢層で発症する可能性があります。虫垂切除を経験した人や喫煙者は、潰瘍性大腸炎の発症リスクが低いとされています。
潰瘍性大腸炎の原因には遺伝的な要因も関与しており、家族に患者がいる場合、発症のリスクがあると考えられます。
潰瘍性大腸炎と似ている疾患
潰瘍性大腸炎と似た症状を引き起こす疾患には細菌性の大腸炎(細菌性赤痢、カンピロバクター腸炎)やクローン病があります。これらの疾患は潰瘍性大腸炎とは異なる病態を持ち、適切な診断が重要です。
細菌性赤痢
細菌性赤痢は、赤痢菌が原因となる腸管感染症で、主にインド、インドネシア、タイなどで感染が多く見られ、海外渡航中に感染することが一般的です。国内での感染は、帰国者からの二次感染や細菌汚染された食品の摂取によるものがあります。症状は潰瘍性大腸炎に似ており、感染後約1~5日で潜伏期間を経て発熱、腹痛、下痢などが現れます。
カンピロバクター腸炎
カンピロバクター腸炎は、カンピロバクター菌による腸管感染症であり、汚染された水や食料を摂取することにより感染します。鶏肉経由であることが一番多く、特に生や加熱が十分でない鶏肉の摂取や、生肉を調理した包丁やまな板を経由して感染が起こります。通常、感染して2日間から4日間の症状のない期間があった後に下痢、腹痛、発熱、悪心と嘔吐が見られます。
クローン病
クローン病は、小腸や大腸などの消化管粘膜が慢性的な炎症を起こす炎症性腸疾患の一つです。潰瘍性大腸炎と同様に、厚生労働省によって指定難病とされています。クローン病の症状には発熱、全身倦怠感、貧血、腹痛、下痢、血便、体重減少などが含まれます。この病態は慢性的であり、治癒が難しい特徴があります。
潰瘍性大腸炎の原因
潰瘍性大腸炎の具体的な原因は未だ解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。その中には腸内細菌の異常な関与、免疫機能の自己免疫反応の異常、食生活の変化などが挙げられます。これらの要因が複雑に絡み合い、炎症性の反応を引き起こし、潰瘍性大腸炎の症状を発生させる可能性があります。
潰瘍性大腸炎の症状
潰瘍性大腸炎の主な症状は、下痢や血便で、痙攣性または持続的な腹痛が発生することがあります。症状が重症化すると、下痢などの消化器症状に加えて発熱、貧血、体重減少などの全身症状が現れることがあります。皮膚や関節、眼などにも合併症が生じることがあります。
潰瘍性大腸炎の検査・診断
潰瘍性大腸炎の治療
潰瘍性大腸炎の治療は主に薬物療法、血球成分除去療法、および必要に応じて外科治療が行われます。薬物療法では、5-ASA製剤の経口薬や注腸薬が主に使用され、これらは主に寛解導入のために使われます。症状が重症の場合は、5-ASA製剤とステロイド剤が併用されることがありますが、最近では抗TNF-α抗体製剤やタクロリムス、α4インテグリン阻害薬などの新しい治療薬も導入されています。
ステロイド治療が中等症以上の患者に効果がない場合、血球成分除去療法が実施されることがあります。これは、体内の異常な免疫反応を抑制するために、患者の血液から特定の成分を取り除く治療法です。この方法により、潰瘍性大腸炎に関連する症状や炎症の程度を軽減し、寛解を促進することが期待されます。
専門的な治療が必要な場合には連携施設をご紹介いたします。
潰瘍性大腸炎と妊娠
潰瘍性大腸炎患者が妊娠・出産においては、一般的に大きな問題はありませんが、注意が必要な点がいくつかあります。
潰瘍性大腸炎が活動期にあると、不妊、早産、流産のリスクが高まる可能性があります。妊娠を希望する場合は、潰瘍性大腸炎の活動期を避けて計画的に妊娠することが望ましいです。潰瘍性大腸炎は遺伝子疾患ではないため、親から子への遺伝リスクは低いです。しかし、男性が子どもを望む場合、精子数が減少する可能性のある薬物を使用している場合は、医師に相談することが重要です。
潰瘍性大腸炎の薬物療法は、寛解状態を維持し、出産まで発症しないように調整されます。しかし、症状が出た場合は非妊娠時と同じ治療を行います。胎児に影響のある薬物もあるため、医師の指導を受けながら治療計画を進めることが必要です。
クローン病について
クローン病は、小腸と大腸の粘膜に炎症や潰瘍を引き起こす原因不明の疾患で、炎症性腸疾患(IBD)の一種です。潰瘍性大腸炎とともに代表的なIBDとして知られています。主な症状は腹痛、体重減少、血便などです。病変が小腸に影響を与える場合、栄養の吸収が妨げられ、体重減少が起こります。腹痛は炎症や潰瘍が原因で発生し、潰瘍性大腸炎と同様に血便も見られることがあります。
クローン病の特徴
クローン病は特に10代から20代の若年層に多く見られ、男女比は約2:1とされています。男性は20~24歳、女性は15~19歳が中心となり、若年者において発症が顕著です。先進国の中でも特に北米やヨーロッパでの発症率が高い傾向があります。これは生活水準や環境の差によるものと考えられています。食生活や衛生環境が影響しており、特に動物性脂肪やタンパク質を多く摂取することがクローン病の発症に関連しています。
クローン病と似ている疾患
腸結核
特徴:小腸や大腸の消化管粘膜に慢性的な炎症が起こる
症状:発熱、貧血、体重減少、腹痛、便通異常(下痢・血便・粘血便)
サルモネラ腸炎
特徴:サルモネラによる細菌汚染が原因で発症
症状:発熱、吐き気・嘔吐、腹痛、下痢などが継続し、原因となる食品は鶏卵や食肉
NSAIDs潰瘍
特徴:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の副作用により、消化管に潰瘍が起こる
症状:胃もたれ、胃の不快感、上腹部痛など
潰瘍性大腸炎
特徴:小腸や大腸の消化管粘膜に慢性的な炎症が起こる
症状:発熱、貧血、体重減少、腹痛、下腹部の違和感、便通異常(下痢・血便・粘血便)
クローン病の原因
クローン病の症状
クローン病は発症部位によって症状が異なり、個人差が大きい疾患です。主な発症部位には小腸型、小腸・大腸型、大腸型があり、これらによって病態が異なります。
一般的な症状としては、腹痛と下痢が挙げられます。これは半数以上の患者で見られる共通の特徴です。そのほか、発熱や全身倦怠感、貧血、腹部腫瘤、下血などがみられます。さらに、腸管や腸管外の合併症が生じることで、瘻孔(ふくこう)、膿瘍、狭窄などの合併症が発生する可能性があります。また、関節炎や虹彩炎、結節性紅斑、肛門部の病変などが腸管外の症状として現れることもあります。
クローン病の検査・診断
クローン病の治療
クローン病の治療は薬物療法、外科的治療、食事療法の組み合わせにより行われます。薬物療法では、軽症や寛解している患者様には5‐ASA製剤を使用し、免疫抑制剤や抗TNFα抗体製剤などは進行した場合に使用されます。また、比較的副作用が少ないステロイド剤(ブデソニド)も効果的です。
外科的治療は、腸管の合併症が進行した場合や薬物療法が効果的でない場合に検討されます。手術の適応には狭窄や腸管穿孔などが含まれます。
食事療法では、低脂質な和食を中心にし、動物性脂肪の摂取や揚げ物を抑制することで下痢の誘発を防止します。これらの治療法を組み合わせ、個々の患者の症状や疾患の進行度に応じた最適なアプローチが必要です。
当院では、クローン病と診断した際に、治療は連携病院に紹介させていただきます。
クローン病と妊娠
クローン病の患者が通常の生活を送る上で、寛解期においても治療は不可欠です。寛解期には、症状がおおむね安定している状態であるが、疾患の進行を防ぐためにも継続的な治療が求められます。
妊娠や出産を考えている場合も、特に治療の必要性が高まります。妊娠中は安全性の高い薬の使用が重要であり、治療の方針は早めに専門医と相談することが大切です。妊娠の最適な時期についても専門医と相談し、妊娠が判明した場合には即座に治療方針を確認することが理想的です。